米国三菱セクハラ訴訟
- 她他后敬子(たたうしろ すきこ)
- 2024年5月17日
- 読了時間: 7分
<2つのセクハラ訴訟>
2024/05/17
1994年、米国三菱への民事訴訟がはじまる。
それに伴い、EEOC訴訟もはじまる。
EEOCは、この1994年の訴訟以降に1年間調査し、集団訴訟(クラスアクション)の方法をとる。
※EEOC訴訟は従業員15人以上の会社等にしか適用できない方法である。
(尚、民事訴訟には、そのような縛りはない)
起訴状では『1990年初めから米国三菱は女性に対して極めて敵対的(極めて酷い対応の環境)を作り、それを助長してきた』とのこと。
女性への言葉による嫌がらせ(「ビッチ」「アホ」等)、性的落書き、体に触れる、キスをする、男性従業員が女性従業員の仕事の妨害・けがを負わせる、アメリカ人研修生をストリップ劇場に連れて行く等があった。
新聞「ワシントンポスト」は、会社公認の「セックス・パーティ」を報じる。
『ヌードダンサーを雇って社外でパーティを開催、男性従業員と性交渉をし、その写真を社内で配布、海外から従業員赴任時に少なくとも4回行われた。』
<三菱の対応の問題>
会社が適切是正を取らないことが問題に。
EEOCシカゴ支部への抗議:100人程度の抗議予定が2500人に(三菱がバスを59台を用意し、抗議して人に日当を支給)。
セクハラを告発した女性に嫌がらせや報復があった。
三菱の工場でセクハラ問題改善は見受けられなかった。
EEOCは、「そもそも米国三菱は特定の属性<「クラス」と呼ぶ>に排他的である」と問題視。その人々を救済する方法『クラスアクション』という裁判方式をとる。
「クラス」とは女性、同性愛者、障常者、黒人、高齢者等のこと。
クラスアクションの対象は元従業員も含むことから、補償金は多額になることが殆ど(裁判に加われなかった人も救済できる)。
そのためクラスアクションで訴えられた会社は防止措置をとる可能性が高い。
EEOCは、「米国三菱問題は、個別の問題ではなく、会社全体に蔓延している」と主張。
<米国三菱セクハラ問題の発展>
・米国三菱問題は、【『女性団体(全米女性機構 等)』『市民団体 (公民権運動 等)』 VS 『米国三菱』】に発展。
・デンプシー副会長は米国三菱問題だけでなく「日本における女性差別の現状」を批判、「機会均等の改正」を訴える。
・公民権運動指導者ジャクソンは三菱、トヨタ、ホンダ、ソニーらと会談。
「少数民族の従業員を雇うこと」「日本企業のマイノリティ・ビジネスを増やすこと」などを要求。「調査団に少数民族が入ってない」ことを問題視。
日本企業のありかた、日本の女男差別が問われた結果、【日本の均等法にハラスメント禁止】が盛り込まれた。
<判決:訴訟の補償金 等>
・米国三菱は、民事訴訟で950万ドル(約13億7000万円。女性29人のうち和解27人)
・EEOCのクラス・アクションで3400万ドル(約49憶円)の補償。
(京都府のサイトにこの補償金3400万=約49億円とあるので、同じレートで計算)
・企業寄付の一環で10万ドルを地域の女性問題プログラムに提供。
・他に労働長官への謝礼、弁護士費用など訴訟に関する出費等を支払う。
・米国三菱はマイノリティ・ビジネスの改善プログラムを発表。ディーラーの10%をマイノリティに設定。
この民事訴訟の和解内容は秘密なのだが、AP通信の報道で総額950万ドル、1人あたり最高50万ドルということが分かった。
<他のアメリカ進出企業のセクハラへの対応>
訴訟後、日本在外企業協会がアメリカ進出をしている企業69社を調査した。。
「セクハラを禁止する社内規定を制定することを検討」している企業は60%(米国三菱セクハラ訴訟前は7%)。
「セクハラに関するトレーニングを従業員に提供する」企業は57%(訴訟前は6%)。
<今の訴訟では補えないIが考えること>
このように、セクハラや性暴力は勤労意欲を失い、心の病気や退職に追い込まれる人が多い。
被害者は心の病気になり、その会社を辞めても働きに出られなくなったり、職を転々とすることになる人だって多い。
被害後の人生で その後続く または その被害によって新しく起こってくる理不尽は、加害者や企業が考えてくれるわけではない。

アメリカのセクハラについて
米国でセクハラの整備が進んだのは1970年後半~1980年代初め。
<セクハラとは>
1980年、連邦メリット・システム保護局MSPBの質問にあったセクハラ対象7
<深刻度大 セクハラ>
①未遂・既遂のレイプと性的暴行
<深刻度高め いやがらせ セクハラ>
②希望しない性的手紙、電話等
③望まない性的欲求を求められるプレッシャー
④嫌がるのに体を触られる、覆い被さられる、部屋の隅などに押しやられる、つねられる
<深刻度が低め セクハラ>(Iが深刻度低いと思っているわけではありません)
⑤望まないデートを求められるプレッシャー
⑥嫌がっているのに性的表現や質問をされる
⑦希望しない性的な冗談、表現、質問をされる
<回答>男性含め2万3000人回答の結果
・2年で42%の女性がセクハラにあっていた。
・16歳~24歳までの女性は45歳以上の女性より2倍以上の被害を受けていた。
・55歳以上の女性は5人に1人が嫌がらせを受けていた。
・深刻度の高い被害は25歳~34歳が多くされ、24歳以下は深刻度の低い嫌がらせを多く受けていた。
・大学卒のほうが深刻な被害に遭いやすかった(男性がライバル女性を蹴落とす手段としてセクハラをおこなう)。
・(未遂を含める)レイプ被害女性の加害者は、51%が上司だった(部下4%)。
・加害者(上司に同僚、他の従業員を含む)の割合は、深刻度大65%、深刻度高め71%、深刻度低め72%だった。
<被害者と加害者の関係>
・加害者は殆どが被害者の女性より年長だった。
・民族的・人種的な背景が同じことが多い。
<セクハラの影響>
・深刻度大(未遂を含めたレイプや性的暴行)の被害結果:赤色
・深刻度高めの被害結果:橙色
・深刻度低めの被害結果:青色
①精神的・肉体的な状態が悪化 82%、37%、21%
②働く意欲が減退 62%、41%、24%
③仕事に向ける時間と参加度合いが減った 48%、14%、5%
④他の人々と一緒に仕事をする能力に悪影響を与えた 32%、18%、10%
⑤ 働く量が減った 28%、13%、6%
⑥仕事の量が悪化した 21%、12%、4%
<Iの考察>
この影響は、PTSDの症状とも見える。
このMSPBの回答の深刻度大は【未遂のレイプや性的暴行】を含んでいる。
当時のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)によると、戦闘,性的暴行,および自然災害,または人災の生涯PTSD有病率は8%(2020年改訂では9%)だったと思う。
有名精神科医たちからIはPTSDではないと診断を受けたが、
未遂を含めた①のパーセンテージを見てほしい。
(深刻度低めが被害が低いということはないが)レイプ既遂は圧倒的に生活に打撃を与える。
生活が一転してしまうかということは死活問題である。
このパーセンテージから、レイプ既遂かどうかが、圧倒的に生きづらくなることと関係があることが分かる。
それなのに、レイプ被害後、PTSDを確率で考える精神科医はおかしいと思う。
レイプ既遂の被害者は上の結果からしても、デフォルトでPTSDだと思う。
しかし、【被害者自身が『自分はPTSDではない』と決めるとき、『PTSDではない』で良い】と思う。
<トヨタセクハラ訴訟 と 日本のレイプ訴訟>
【2006年 北米トヨタ自動車セクハラ訴訟事件】では、1人の日本人女性が1人の日本人男性に総額1億9,000万ドルの損害賠償請求訴訟を提起している。
被害者は出張先のホテルの部屋や公園で体を触られるなどのセクハラを受けた。
当時、日本では、この被害者女性の方を「(金銭感覚が)おかしい」「(頭が)おかしい」と とらえる風潮があった。
被害者も加害者も日本人なのに、訴訟場所がアメリカだというだけで、これだけの提起が出来る。
2006年当時120円ほどのレートなので、228億円になる。
(2006年当時の貨幣価値なので、今ならもっと高い)
※この民事訴訟の和解内容も米国三菱セクハラ訴訟の民事訴訟と同じく秘密で、こちらは分かっていない。
ちなみにIの事件は、ほぼ知らない人(お店に来た客)から 睡眠薬を入れられレイプ既遂、裸の写真などもある(仕事のお金も払われなかった)が、着手金のみで250万以上かかり、「100万円は判決でとれない」と訴訟前に弁護士から言われました。
もちろん北米トヨタの社長だからということはあるでしょう。
しかし、セクハラとレイプ既遂ということがあります。
仮に、北米トヨタの社長が【知らない人相手に 薬物使用、レイプ既遂、裸の写真を撮る】を起こしたら、228億円より 莫大な訴訟を提起できる可能は高いのです。
アメリカでは『15人以上の企業なら、EEOC訴訟ができ、匿名で、無料提起で、訴訟を簡単に起こせ、調査もEEOCが行ってくれる』。
アメリカと日本の差。
日本は被害者が訴訟提起し辛すぎる。
日本でも訴訟費用は国が払うとか、加害者の有罪が決まったら加害者に貸し付ける等すべきです。
被害者が裁判費を負うなんて、理不尽すぎる。
日本の現状を、三菱やトヨタが先導して変える努力をしろよ
日本の現状を、日本の専門家が先導して変える努力をしてよ
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