インド下院 : 議席3分の1女性に決定
- 她他后敬子(たたうしろ すきこ)
- 2023年9月22日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年10月9日
2023/09/22
1966年、インディラ・ガンディーが首相に選出され、世界で2人目の女性元首になった。
現在、労働可能年齢女性の3分の1が、正規の労働力であるにもかかわらず、政治は男性優位である。
前回の選挙では、インドの国会議員788人のうち女性はわずか104人 (13%)で、世界から大きく後れをとり、問題視された。
(日本は2023年9月22日現在、9.7%で国際的に「女性の政治参加が非常に低い」と更に問題視されている)
2023年9月20日(水)、3分の1(33%)を女性に割り当てる法案が可決された。
この法案は、大統領が署名する前に、上院であるラジャ・サバで承認を得なければならない。
この上院での承認はインドの国勢調査次第であり、実施にはまだ時間がかかる。
国勢調査は10年毎に行われ、2021年に実施予定だったが、コロナ禍で延期され、2025年予定である。
インドの下院と州議会の議席の3分の1が女性に割り当てられるのだが、【区割り変更】をしなければならず(選挙区全体の数を増やすために下院の議席の境界線を引き直す計画)、
最長で10年もかかる可能性がある。
その為、ソニア・ガンディー元国会下院議長は、即刻の実施を要求した。
「2年、4年、8年、何年待たなければならないのでしょうか?
これを遅らせることは、女性に対する重大な不公正行為です」と述べた。
インドで、この3割クオーター制が初めて提案されたのは1996年(27年前)である。
過去6回の法案成立の試みが、議員たちの激しい抵抗などがあり頓挫してきた。
それが20日(水)の8時間の審議中、インド人民党BJPと、野党第一党が何を競っていたかと言うと、「この法案の手柄はどちらか」という事である。
インドという、女性差別が恐ろしいとされてきた国の、時代は明らかに変わっている。
(インドは上位カーストの女性の人権や就職率はほぼ女男平等だが、それ以外の女性へはサティ(寡婦を生きながら焼く風習)、アシッドアタック(酸を女性に浴びせる)、女の子を産まないようにする・また産んでも殺す 等が いまだに存在しており、女性の扱いがダブルスタンダードだと言われている)
今回、この【女性確保法案】は下院の議員によってほぼ全会一致(454票)で可決、反対票はわずか2票だった。
反対票の1票を投じたアサドゥッディン・オワイシ議員は、「この法案は上位カーストの女性にしか恩恵を与えない」と述べており、これは下位・中間カーストの女性を考えた意見だ。
野党議員の数名も【OBCに属する女性のための別枠】を要求している.
<OBCとは?>
ヒンドゥー教のカースト制度は、バラモン(司祭)が頂点で、中間がOBC、最下層がダリット(かつての不可触民)とアディヴァシス(部族民)である。
OBCとは、Other Backward Class(その他の後進階級)の略語で、社会的・教育的後進階級である。
OBCは1980年人口の52%、2006年は41%を占めるのではと考えられている多数の下位・中間カーストを指す。
インドの国勢調査では、常にダリット(かつての不可触民)とアディヴァシス(部族民)の人口は記録してきたが、OBCを数えたことはない。
この法案では、ダリット(かつての不可触民)とアディヴァシス(部族民)には3割クオーターが規定されたが、OBCの女性に対してのクオーター制が除外されている。
そのため、ソニア・ガンディー元国会下院議長は「OBCの集計を取り、この制度の恩恵をOBCの女性にも拡大すべきである」と述べた。
モディ首相は、この法案を「歴史的な法案」であり、政治プロセスへの女性の参画を促進するものだと述べる。
この女性枠は、来年の5月の選挙戦(モディ首相3期目)で女性票を取り込むために実施される可能性が高いという。
<おわり>

<ソニア・ガンディーについて>
1946年12月9日生まれ。
1991年、夫で元首相のラジーヴが暗殺される。
〔※夫ラジーヴ・ガンディーは世界2番目の女性元首インディラの息子である。
ラジーヴは弟が1980年に飛行機事故で死亡後 政界に入り、1984年母インディラが暗殺されると、引き継いで首相に就任した〕
夫暗殺7年後1998年、ソニアは国民会議の党首に就任し、22年間務める。
2019年、再び国民会議の党首に返り咲き、さらに3年間務めた。
インド独立後の歴史の大半を統治してきた社会民主主義政党:インド国民会議(Indian National Congress)の議長を最も長く務めた。
長男ラーフル・ガンディーも2004年から下院議員であり、国民会議の幹事長も務める。
長女プリヤンカ・ヴァドラは政界入りはしていないが、国民会議の応援演説などインディラ・ガンディーの再来だと言われる。
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