アメリカの性暴力の統計
- 她他后敬子(たたうしろ すきこ)
- 2023年8月26日
- 読了時間: 12分
2023/08/26
少し古めのデータ(アメリカ1998年、2013年~2020年のデータ中心)ですが、翻訳しました。
アメリカに住む人種割合(2019年)
ヒスパニックではない白人60.1%
ヒスパニック(スペイン文化圏)18.5%
ヒスパニックではない黒人13.4%
アジア人6.1%
アメリカ先住民族&エスキモー1.3%
その他0.6%
<性暴力加害者の人種(2013年に司法省が発表している1994年~2010年までの統計)>
白人57%
黒人27%
民族性が分からない8%
その他6%
ダブル(ミックス:混血)1%
レイプ被害の10人のうち8人が被害者の顔見知りによるもの
子どもと10代の被害者の多くは加害者を知っています。
執行機関に報告された子どもへの性犯罪のうち、93%の被害者が加害者を知っていました。
そのうち59%が知人、34%が家族、7%が知らない人でした。
刑務所に投獄された人は、刑務所の職員から性暴力被害に遭うことが多い
受刑者への性暴力の60%が、刑務所の職員によるものです。
<加害者の年齢>
50%が30歳より年上
25%が21歳~29歳
9%が18歳~20歳
15%が17歳以下
性犯罪の加害者は犯罪歴があることが多い
レイプ犯罪者は連続犯であることが多い
<レイプの被疑者1000人あたり検察官に送致される割合>
・370人が重罪の判決(その内100人は5つ以上の有罪を受けている)
・520人は保釈金を払うか、他の理由で裁判を待っている間に保釈されている
・保釈された被疑者のうち70人は事件の判決が出る前に別の犯罪で逮捕されている
釈放された囚人の大多数は3年以内に新たな犯罪で逮捕されている
21%がわずか6か月以内に
31%が1年以内
44%が2年以内
51%が3年以内
56%が4年以内
60%が5年以内
5年以内に6割もの人が再犯
レイプ容疑を申し立てられた人の半数が少なくとも1度の前科があります
1000人あたりの前科の割合
1度レイプの前科がある:120人
1度強盗の前科がある:140人
1度暴行の前科がある:110人
2~4度レイプの前科がある:190人
2~4度強盗の前科がある:170人
2~4度暴行の前科がある:210人
5~9度レイプの前科がある:120人
5~9度強盗の前科がある:120人
5~9度暴行の前科がある:130人
10度以上レイプの前科がある:80人
10度以上強盗の前科がある:100人
10度以上暴行の前科がある:100人
裁判の公判前に釈放された容疑者は新たな犯罪を犯すことが多い
1000人あたりの割合
公判前 レイプ:520人
公判前 強盗:440人
公判前 暴行:630人
※これを合わせると1590人くらいになるので、もしかしたら次に捕まるまでに何件か事件を起こしているとか、強盗にはいってレイプもしているとか、そういうことなのかもしれません。
別の罪で逮捕 レイプ:70人
別の罪で逮捕 強盗:110人
別の罪で逮捕 暴行:90人
有罪判決を受けた場合、加害者は刑務所で過ごす時間が長くなります
2013 年に性暴力で投獄された受刑者は 16万1000 人で、これは全受刑者の約 12% です。
これらの受刑者は刑務所で長く服役しています。
性暴力の服役期間の中央値は、2002 年から 10 か月増加しています。
服役期間の中央値は 38 か月(3年2か月)から 48 か月(4年)になりました。
加害者はさまざまな形の暴力を使って性的暴行を行っています
レイプおよび性的暴行の 11% で、加害者は武器を使用しています。
6% 銃
4% ナイフ
1% その他
約3件中2件に手、足、歯などに個人的な武器が使用されています
レイプと性的暴行の90%は1人による犯行
10% は 2 人以上による犯行
アメリカでは68秒に1人、性暴力の被害にあっています
毎年平均46万3634人のレイプと性的暴行の被害者(12歳以上)がいます。
若い人の性暴力被害の割合は高い
12歳~17歳:15%
18歳~34歳:54%
35歳~64歳:28%
65歳以上:3%
アメリカの女性は一生のうち、6人に1人がレイプやレイプ未遂の被害に遭っています
アメリカでは何百万人もの女性がレイプを経験しています。
1998年、推定17万7000人のアメリカ人女性がレイプ未遂またはレイプに遭いました。
若い女性は特に危険に晒されています。
子どもへの性暴力被害者の82%は女性です。
成人の性暴力被害者の90%は女性です。
16歳~19歳の女性はレイプやレイプ未遂に遭う確率が一般人の4倍です
大学に在籍している18歳~24歳の女性が被害に遭う確率は一般人の3倍です。
大学に通っていない18歳~24歳の女性が被害に遭う確率は一般人の4倍です。
大学院生と専門学生は、女性の9.7%と男性の2.5%の人が、物理的な力、暴力、または無能力化(incapacitation:フリーズという意味なのかなと思います。もしかしたら、学校にいられなくするなどの脅しを意味しているのかもしれませんが)によってレイプまたは性的暴行を経験しています。
学部生(学位資格を取得するために学士号を取得する学生)では、女性の26.4%と男性の6.8%が、物理的な力、暴力、または無能力化によってレイプまたは性的暴行を経験しています。
学生の5.8%は、大学に入学してからストーカー行為を経験しています。

<子どもへの性暴力>
児童保護サービス機関は 9 分ごとに、児童性的虐待の申し立てを立証するか、その証拠を見つけています。
16年度だけで、児童保護サービス機関は、57,329人の子どもが性的虐待の被害者であることを立証したか、強力な証拠を発見しました。
18歳未満の女の子に9人に1人、男の子の20人に1人が性的虐待や性的暴行を経験しています。
18歳以下の性暴力被害者の82%が女性です。
16歳~19歳の女性はレイプ、レイプ未遂、性的虐待に遭うリスクが一般人口の4倍です。
児童への性暴力の影響は長期に及び、精神的に影響を与える可能性があります。
(加筆:これは可能性ではなく、【被害を与え続けます】で良いと思います。)
児童の性暴力経験者は、非経験者に比べ、精神的に苦しむなどの問題を抱えることが多くなります。
<児童虐待被害者が問題を抱える例>
・薬物乱用の問題を抱えるリスク:4倍
・成人でPTSDになるリスク:4倍
・成人で大うつ病になるリスク:3倍
18歳未満の被害者の割合
12歳未満 34%:12歳~17歳 66%
子どもの被害者の多く(93%)は加害者を知っています
7% 知らない人
59% 知り合い
34% 家族
2013年にCPS (児童保護サービス)に報告された子どもへの性暴力加害者のうち、5,000人が女性、47,000人が男性でした。
CPSが裏付けとなる証拠を見つけた性暴力の加害者の割合は、9%が女性、88%が男性、残りの3%は不明でした。
<18歳~24歳への性暴力>
大学生であろうとなかろうと、その年齢の人は被害に遭うリスクが高いです。
女性大学生(18〜24歳)は、同じ年齢の非学生よりもレイプや性的暴行の被害者になる可能性が20%低くなっています。
男性大学生(18〜24歳)は、同じ年齢の非学生よりもレイプや性的暴行の被害者になる可能性が78%高くなっています。
性暴力は大学内で他の窃盗などの犯罪より蔓延しています
大学に在籍している女性の 性暴力に遭う確率と窃盗に遭う確率 2:1
全女性の性暴力に遭う確率と窃盗に遭う確率 5:4
大学年齢の女性のサバイバー(性暴力の後生き延びている人)の5人に1人が被害者支援機関から支援を受けました。
TGQN(トランスジェンダー、クィア、ノンコンフォーミング:性に関する旧来の固定観念に合致しない人)の大学生の23.1%が性暴力を経験しました。
大学生の性暴力被害者は法執行機関に相談しないことがよくあります。
※この調査では、被害者が法執行機関に報告しない理由を複数引用できるため、この統計は正確でない可能性があります。
大学生の報告状況(5人中4人のデータ) と 非大学生の報告状況(3人中2人のデータ)
<報告したが、警察に行かなかった>
大学生4% 非大学生5%
<警察は何も助けない、または何も出来ないと考えていた>
大学生9% 非大学生10%
<加害者ともめることが嫌だった>
大学生10% 非大学生14%
<報告する程 重要だとは考えていなかった>
大学生12% 非大学生19%
<報復を恐れていた>
大学生20% 非大学生20%
<個人的な問題だと考えていた>
大学生26% 非大学生23%
<他の理由>
大学生35% 非大学生31%
18歳~24歳の大学生の24%だけが法執行機関に相談しています。
18歳~24歳の非大学生の32%だけが法執行機関に相談しています。
性暴力被害は一定の期間に高い割合で発生しています
大学の性暴力の半数が8月から11月の間に発生しています。
大学の1学期と2学期の最初の数か月がリスクが高くなっています。
大学の法執行機関は、大学の性的暴行に対処・対応する上で重要な役割を果たしています
・大学内法執行官の86%がキャンパスの敷地外で逮捕する権限をもっています。
・大学内法執行機関の86%がレイプ防止プログラム担当者がいます。
・大学内法執行機関の70%は地方の法執行機関とMOUs(覚書)をかわしています。
・大学内法執行機関の72%にはサバイバー(性暴力に遭った後、生存している人)の対応と支援をするスタッフがいます。
・2,500人以上在籍する4年制大学のうち、75%が武装した役人を雇用しており、それはこの10年で10%増加しています。
<男の子、男性への性暴力>
18歳~24歳の男性大学生は、その年の非大学生に比べてレイプや性的虐待に遭うリスクが5倍です。
アメリカでは何百万人もの男性がレイプの被害に遭っています。
1998年までの時点で278万人の男がレイプやレイプ未遂の被害に遭いました。
アメリカ人男性の3%、つまり33人に1人の男性が生涯のうちにレイプやレイプ未遂に遭っています。
レイプ被害者の10人に1人が男性被害者です。
※少し古いデータなので、TGQNはトランスジェンダー、クィア、ノンコンフォーミングの略語ですが、性的マイノリティと訳しても良いかもしれません。
<TGQNの学生は性暴力のリスクが高い>
TGQNの大学生の21%が性暴力を受けたことがあるのに対し、TGQN以外の女性は18%、TGQN以外の男性は4%です。
性暴力は被害後、長期に渡って被害を与え続ける可能性があります
(加筆:これは可能性ではなく、【被害を与え続けます】で良いとは思います。)
性暴力後、自殺や抑うつという様なことに苦しむ可能性が高まります。
レイプされた女性の94%がレイプ後2週間の間PTSDの症状を経験します。
レイプされた女性の30%がレイプ後9か月PTSDの症状を報告しています。
レイプされた女性の33%がレイプ後自殺を考えています。
レイプされた女性の13%がレイプ後自殺を試みています。
レイプ被害者の約70%は中等度から重度の苦痛を経験しており、これは他のどの犯罪よりも高い割合です。
性暴力被害者は一般の人よりも薬物を使用する可能性が高くなります
・マリファナの使用:3.4倍
コカインの使用:6倍
他の主要薬物:10倍
性的暴力は、被害者と家族、友人、同僚との関係にも影響を及ぼします
・性暴力被害者の38%は仕事上 等で、上司・同僚・仲間と重要な問題を含む職場や学校の問題を経験しています。
・37%は、以前よりも頻繁に口論になる、家族や友人を信頼できない、犯罪前ほど親密に思えないなど、家族・友人間で問題を経験しています。
・親密なパートナーからの性暴力被害のサバイバー(生存者)の84%が、中程度から重度の専門的な問題や、感情的な問題を抱えたり、職場や学校で問題が増えます。
・家族、親しい友人、知人からの性暴力被害のサバイバー(生存者)の79%が、中程度から重度の専門的な問題や、感情的な問題を抱えたり、職場や学校で問題が増えます。
・知らない人間からの性暴力被害のサバイバー(生存者)の67%が、中程度から重度の専門的な問題や、感情的な問題を抱えたり、職場や学校で問題が増えます。
被害者は妊娠や性感染症(STI)のリスクがあります
研究によると、1 回の無防備な性交で妊娠する確率は 3.1 ~ 5% であり、月の性交の時期(女性の排卵等)、避妊薬の使用の有無、女性の年齢などのさまざまな要因に関係します。
出産適齢期の女性に対するレイプや性的暴行の平均件数は毎年約25万件です。
したがって、アメリカで毎年レイプによって妊娠する子どもの数は、7,750人~ 12,500人であると考えられます。
※これは推定値であり、実際の数値は異なる場合があります。
この統計は、さまざまな研究からの情報を示しています。
さらに、この情報は、避妊やコンドーム使用の影響などの、妊娠の可能性を増減させる要因が考慮されていない可能性があります。
それゆえ、情報源を確認し、詳細を確認することを強くお勧めします。
<ネイティブアメリカン(先住民族)は性的暴力のリスクが最も高い>
平均して、12歳以上のアメリカインディアン(先住民族)は年5,900件の性暴力に遭っています。
アメリカインディアン(先住民族)は、すべての人種と比較して、レイプ/性的暴行を経験する可能性が2倍です。
アメリカインディアン(先住民族)に対する性暴力は41%は知らない人から起こっています。
知人による被害は34%、親密な人や家族による被害は25%です。
性的暴力は全国の何千人もの囚人に影響を及ぼしています
毎年推定80,600人の受刑者が刑務所や刑務所にいる間に性暴力を経験しています。
受刑者に対するすべての性暴力の60%は、刑務所のスタッフによって行われています。
受刑者と職員の間の性的接触の50%以上(これらはすべて違法です)は合意に基づいていません。
軍隊での性暴力は報告されないことがよくあります
2018年度には6,053人の軍人が兵役中に性的暴行を受けたと報告しました。
国防総省は、同年に約2万500人の軍人が性的暴行を受けたと推定しています。
国防省は、2018年度に軍隊の現役女性の6.2%、軍隊の現役男性の0.7%が性的暴行を経験したと推定しています。
<終わり>
RAINNという性暴力統計はこちら(グラフで見やすいサイト)2013年ごろ
RAINNという性暴力統計はこちら(グラフで見やすいサイト)2016年ごろ
国防省のデータ2020年発表のデータはこちら
<RAINN の統計について>
性暴力は測定が難しいことで知られており、犯罪の全体像を提供する単一のデータソースはありません。
RAINN の Web サイトは、各トピックについて最も信頼できる情報を参考にしています。
主なデータ ソースは、司法省が毎年実施する全国犯罪被害者調査 (NCVS) です。
NCVS は、研究者が毎年数万人のアメリカ人にインタビューして、彼らが経験した犯罪について学びます。
この調査で、警察に報告されなかったものも含めた犯罪総数の推定値を計算しています。
NCVS には多くの制限があり、最も重要なのは、12 歳未満の子どもが含まれていないことです。
しかし、米国の犯罪統計の最も信頼できる情報源だと考えられます。
<アメリカの性暴力のデータを見た感想>
性犯罪のデータを日本の法務省が認知させることで、実際の被害者の多さを知ることになると思います。
認知が進めば、被害者が孤独に感じることをも減らせると思います。
実際の被害者の人数はこんなに多いんだと知ることは大切です。
どの国でも被害者数がとても多い犯罪です。
一般の人の理解なしでは、サバイバーが生きていくのは、困難すぎます。
アメリカとノルウェー
アメリカのミーガン法やGPSをつける方法は、実際は再犯率は高いそうです。
ミーガン法は不安を増やしてしまうということがあるそうです。
しかし、アメリカにならい 2008年から性犯罪者や重犯罪者に対するGPSを義務づけた韓国では、再犯率が88%減少しているようです。
ノルウェーではホテルのような刑務所で、家族等とも話せ、週末には家族やパートナーが泊まっても良いし、パートナーが泊まるときにはコンドームも用意してくれます。
そしてSTOPというプログラム(受刑者同士が語らい、女性も入って話をするなかで認知の歪みに自ら気付いていくというものです)を受けると再犯率が3%だそうです。
性暴力サバイバー(性暴力後生き残った人)からすると、生き地獄を味わい続けているのに、加害者がこのような状況だと納得いかないのですが、この再犯率は、他の被害者を生みにくいということでもあります。
しかし、これは
被害者に生きやすい世の中が築かれていないということが問題なのだと思います。
被害者が安心して生きていくことが出来れば、加害者が次の性犯罪を起こさずに生きていけるに越したことはないのだから。
しかし、被害者の多くが「日本でもアメリカの方法を取り入れてほしい」と願っていて、その気持ちも とても良く分かります。
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